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「そうだろうね。だって、12歳も年下だもん。そんな若い男に夢中になられたら、やっぱり嬉しいんじゃない?」
「でも、俺にはもう、そのかわいさはないかもな。」
「え? なんで?」
高田のそんな言葉に、ちょっと驚いて、高田の顔を見た。
高田はスーツのポケットから携帯電話を出して、画面を触りだした。
「嫁さんが、他の男とメールをしているの、気づいちゃってさ。」
「え? 友達じゃなくて?」
「違うよ。絶対に違う。」
高田の言葉が少し強くなった。
高田は手にしていた携帯電話を持ったまま、手を膝の上においた。
「なんか、携帯ばっかいじってて、画面を見ている時は、にやけているから、あやしいなって思ってたんだよ。」
高田の顔には、怒りがにじんでいた。
奥さんはお母さんと違って、裏切らないと思っていたのに裏切られたっていう気持ちが強いんだろうな。
「この前、その現場を抑えてさ。」
「えーっ!」
・・・私もやった。
私もやってやったから、余計にびっくりしてしまった。
「いつも仕事に行く時と、なんか服が違ったんだよ。化粧も念入りでさ。
朝はいつもバタバタして、慌てて行くのに、なんか余裕こいてるから、休みとってんだなっていうのも、なんかわかってさ。」
男でも、気がつくんだね。
「子供がケガしたから、病院へ連れて行くって会社に電話入れて、嫁さんの後を追ってみたんだよ。」
「それで、見たの?」
「・・・あぁ。」
高田はため息をついた。
「明らかに若い男でさ。駅で待ち合わせて、2人で歩き出したから、ずっとついてったら、男の車に乗ろうとしたんだよ。
そこで、真由美って呼んだ。」
真由美とは、高田の奥さんの名前だ。
究極の修羅場じゃない?
人の話って、自分が関係ないから、ドキドキするだけで済むからいい。
怒りの気持ちがないもんね。
「嫁さん、俺の声だってわかったんだろうな。かたまっちゃってさ、動かなかったよ。」
私は、暴かれた方じゃないから、気持ちがわからない。
「奥さん、どうだった?」
「あんなかたまった顔、初めて見てさ。思い出すと笑っちゃうよ。」
私も思い出した。
和人と人妻・えいこさんの密会現場。
笑っちゃうよね、びっくりした顔、かたまった顔。
人って、こんな顔するんだ~って思ったもん。
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