恋する気持ち

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「彼の親とか兄弟と関わるのが、めんどくさい。彼とだけつきあいたいから。」 美佳はいつもそう言う。 そりゃあね、できればそれが一番ラクだけど、結婚となるといろんなことがからんでくるから、しかたないよ。 食事が終わると、アイスコーヒーが運ばれてきた。 アイスコーヒーをひと口飲むと、美佳はまたタバコに火をつけた。 「陽子も恋愛しちゃえば?」 美佳がいたずらに笑った。 「うーん・・・気になる人できたよ。」 私がそう言うと、めずらしく美佳が身を乗り出してきた。 「えーっ! どんな人?」 どこまで話していいかわからず、私はちょっと困った顔をして話し始めた。 「取材で知り合ったんだけどね・・・スポーツクラブのイントラなのよ。」 「へぇ~、何歳なの?」 「29歳なのよ。」 「若っ!」 美佳は、タバコ片手に笑った。 私も思わず笑ってしまった。 ふーっとタバコの煙をゆっくり吐いて、美佳が言った。 「証拠、残しておきなよ。」 「証拠?」 意味がわからず、私はきょとんとした顔をしていた。 「だんなとの離婚に、その人は関係ないっていう証拠。」 私はまだきょとんとしていた。 美佳が、タバコの火を消しながら言った。 「その人とのメールは全部取っておいた方がいいんじゃない? だんなとの離婚話がかなり進んでから知り合ったっていう証拠を残しておかなきゃダメだよ。」 「あ~、そうだよね。」 私はやっと意味がわかった。 「私が証人になってあげたいけどさ、やっぱり物的証拠もないとね。」 「うん、そうだね。」 「ちゃんと見極めなよ。」 「うん、頑張る。」 私は笑いながら答えた。 いつもそうだ。 美佳には、ちゃんと見極めなよって言われる。 それは、私が恋をすると周りが見えなくなってしまうから。 自分でもそれは気がついていた。 私は年下が理想で、つきあった男性は全員年下だった。 夫も2歳年下だ。 年下の男性がやっていることは、すべてがかわいく見えて、守りたくなってしまう。 でもそこが、「陽子の悪いところ~」と、美佳にいつも言われてしまう。 しっかりしすぎているから、男が甘える。 そして面倒をみて、一生懸命にいろんなことをやってしまう。 「だからだんなも浮気するんだよ。少しは、私はできないのアピールしないと。」って、美佳に言われた。 できないのアピール、かぁ・・・ それができないわ。
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