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私が心配していたようなことはないようだった。
「仕事は難しいし、忙しくてさ~。先輩にちょっとイヤな人がいるけど、ガマンしてるんだ。」
「まぁ、どこにでもいるからね、そういう人って。仕事覚えるまでは、仕方ないんじゃない?」
「やっぱりそう思う? 覚えちゃえば、こっちのもんだよね。」
「きっとちゃんと覚えるまでには、半年くらいかかるんじゃない?」
「そうだろうな~。言い方がキツイ人だから、なんか半年ガマンできるか、不安でさ~。」
「大丈夫じゃない? だって、子供達との生活がかかっているんだから。」
と言って気がついた。
さっちゃんの実家は、大地主さんだった。
住まいにも生活にも、そんなに困っていないんだっけ。
仕事からもし逃げても、生活できるんだった。
ムダなアドバイスだったかもしれない。
まぁ、言うことは言わないとね。
さっちゃんは、愚痴を吐きたかっただけのようだった。
正直いって、ほっとした。
もう経験済みだから、同じ間違いはしないだろうけど、まだスキがあるように思えるから、またどんなワナに引っかかってしまうか、わからない。
「もっと仕事に余裕が出てきてからにするよ、相手探しは。」
「そうだね、それがいいんじゃない。」
「陽子は?」
「私もしばらくいいかな~。なんか、男に疲れちゃったから。」
さっちゃんにも、和人と別れたことは話していた。
私が入院した時、
「お母さん、入院しちゃったんだ~」
という子供経由の話を聞いて、さっちゃんはお見舞いに来てくれていた。
その時、ゆっくりと病室で話した。
もちろん、さっちゃんは驚いていた。
「人妻好きだなんて、なんか最低だね。でも、そんなに出会いを求める人妻がいるっていうのがびっくりだよ~。」
そう言っていた。
私とさっちゃんは、前向きに生きていくことで、ちょっとかもしれないけど、成長したと思う。
シングルマザーになって、仕事をしながら子供達を育てていかなきゃならない状況は、体力的にも精神的にもかなりきついけれど、結婚していた頃の苦しかった日々を思えば、なんてことなかった。
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