119人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんだよ、脈なしかよ。」
「言ってんでしょ。最初っから脈なんてないから。」
1人でボーッとしたい気もするけれど、かまってくれる人がいるのは、正直いってありがたいと思った。
「あのさ、聞きたいことがあるんだけど。」
高田に、ずーっと前から聞きたかったこと。
「なに?」
なんとなく言いづらかった。
「なんだよ、告白とか?」
「はい? 絶対に違うから!!」
すごく力強く言ってしまった。
「じゃあ、なんだよ。」
高田は笑いながら言った。
「高田は、どうして奥さんと結婚したの?」
「なんだよ、いきなり。」
ちょっと驚いた顔をして、高田は私の顔を見た。
「前から聞きたかったんだもん。聞きたかったけど、なんか聞きづらくて。」
「別にいいよ、聞いたって。」
「・・・どうして、12歳も上の人と結婚したの?」
「あぁ・・・それはな・・・」
少し言いづらそうだった。
言いづらいなら、別にいいけどって言おうとしたら、高田は話し始めた。
「おふくろって、めちゃめちゃ怖くてさ。肝っ玉母ちゃんみたいな感じで。怒られてばっかだったけど、本当は落ち着いて話したかったし、まぁ、甘えたかったのかな。」
「・・・そうなんだ。」
知ってる。
高田のお母さんがどんな人か。
高校時代、ちょっと有名だった。
高田が月曜日に体操着を家に忘れてしまった時。
連絡していないのに、自転車を猛ダッシュでこいで学校へ来たらしく、真っ赤な顔をして、息を切らしながら、お母さんは学校へやってきた。
高田と同じクラスだった私は、「誰?」と見ていたが、そのお母さんの言葉ですぐにわかった。
「毅!! おまえ、なんで忘れ物すんだよ! みっともねぇな!」
え? 高田のお母さん?
クラス中、みんな見ていた。
「なんだよ、恥ずかしいだろ。来んなよ。」
高田の言った言葉に、お母さんは怒っていた。
身長が150cmくらいのお母さんは、180cmくらいある高田の頭をひっぱたきながら怒鳴った。
「なに言ってんだよ、忘れ物する方がよっぽど恥ずかしいだろ!」
ムスッとした顔の高田を、その時、初めて見た。
お母さんとのやりとりが、ちょっと面白かった。
授業参観の時は、必ず後ろのど真ん中で仁王立ちで見ていたし。
文化祭の時は、まだ準備が始まったばかりの朝一番からバザー会場の入り口に並んでいたし。
最初のコメントを投稿しよう!