新しい出会い

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体育祭の時も、「応援団ですか?」と突っ込みを入れたくなるような派手な格好で来て、一番大きな声で高田を応援していた。 本当に、肝っ玉母ちゃんって感じだった。 あんな勢いで、いろんなこと言われたり、されたりしたら、ちょっと安らぎたい気持ちになるかもね。 でもそれが、お母さんの愛情表現なんだよね。 「でも、高校3年の時に、おふくろが男作って出て行ってさ。」 「え? そうなの?」 びっくりしてしまった。 そんなこと、初耳だった。 「突然だったから、家族みんなびっくりして、なにが起こったのか、わかんなかったよ。」 「そうなんだ・・・でも、結婚を両親に反対されたって、聞いたことあるけど。」 「あぁ、両親に反対されたよ。おふくろは家を出て行ったって、俺のおふくろだろ。」 「まぁ、そうだね・・・」 「親父とか俺とか、弟達のことを一番愛してくれていると思っていたのに、裏切られてさ。  今までの出来事はなんだったんだろうって思ってさ。」 空を見上げながら、遠い記憶を呼び戻そうとしている高田に悪い気がした。 本当は、思い出したくなんかないんじゃないかな。 「嫁さんは、やっぱりすごく年上なだけあって、俺のこと可愛がってくれて。 かいがいしく面倒見てくれて。ちょっとおふくろとかぶったんだよ。  ただ、おふくろは、そんなに俺に優しくなかったけどな。」 高田の笑った顔が、ちょっと寂しさを帯びていた。 そんなお母さんが、男を作って、家を出て行ったなんて・・・ 人って、わからないなぁ。 「お父さんとお母さんは、離婚したの?」 「あっさり離婚したよ。ま、裏切り者はいらないけどな。」 高田も人のこと言えるわけ? 私を口説こうとしたくせに。 「すごく年上の女性に面倒見られるのって、どんな気持ちがしたの?」 「そうだな・・・安心するって言うのかな。安らぐよな、落ち着いているから。」 「あとは? なんか思ったことある?」 「うーん・・・あのくらい年上だと、料理もある程度はできるからな。」 「ふーん・・・」 正直言って、ありきたりの答えだなと思ってしまった。 「この人なら」っていうんじゃなくて、「年上なら」って聞こえて仕方なかった。 「奥さんと結婚しようと思ったきっかけってあったの?」 「うーん、なんとなくかな。」 なんとなくって・・・ 奥さんが知ったら、かなり傷つくんじゃないかな。
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