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「わかった。全部なんか見ないよ。時間かかるし。」
高田にメールのフォルダを開けてもらった。
そこには、分単位で送られた、和人と、高田の奥さんのメールがずらっと並んでいた。
料理の話が多いのを見ると、やはりGardenの中で、料理の話で盛り上がっていた51歳の人妻は、高田の奥さんだと思えた。
『ドライブ行きたいね~。』
『行きたいね。』
『行こうよ、会いたいよ。』
『いいの? 私なんかで。』
『もちろんだよ! 落ち着いた大人の女性好きだし。理想の女性だよ。』
『えー、本当に? 嬉しいな。』
『俺も、知り合えて嬉しいよ。』
『かずに会うの楽しみ!』
『俺も楽しみだよ。水族館行かない?』
『水族館?』
『ダムの近くに小さな水族館があって。ちょっと遠いし、小さいから期待しないでほしいんだけど、いいかな?』
『いいね! 連れてってほしいな。』
ダムの近くの水族館かぁ、私はそのダムに和人と行ったことあるけど、水族館には行ったことないなぁ。
私が一生懸命言った言葉は、やっぱり届かなかったんだね。
人妻は人のものなんだから、手を出しちゃいけないって、あれだけ言ったのに。
相手のだんなさんにばれても、今回は高田だったから、まだよかったけど、これが危ない相手で、事件にでも巻きこまれたら、どうするのよ。
そう言っても、和人はまた、SNSサイトで、人妻との新しい出会いを探すんだろうね。
もう、和人のことで悩んだって仕方ない。
もう、なにを知ってもほったらかしでいい。
わからないなら、事件にでも巻き込まれて、危ない目に遭えばいい。
和人は、高田の奥さんとはもう会わないと、高田の前で誓ったらしい。
休憩時間を切り上げて、もう仕事場に戻らなければならない。
次のページを見たら、もうメールを見るのをやめよう。
ずらっと並んだメールをひとつひとつ読んでいくのは、キリがない。
高田の奥さんから、和人に送られたメールの中に、また私はこの言葉を見つけてしまった。
『会うんなら、平日の昼間がいいんだけど。』
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