不幸中の幸い

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私が帰ってきた気配に気がつき、4歳になった美波が起きてきた。 「お母さ~ん!!」 泣きながら、私に抱きついてきた。 「よく帰ってこられたね。」 子供達の面倒を見てくれていた母も起きてきた。 「うん。友達が大丈夫?ってメールくれて。家庭裁判所から歩いていると返信したら、迎えに来てくれたんだ。」 「よかったね。」 「渋滞すごかったから、車で進むのは大変だったみたいだけどね。私も結構歩いたよ。」 美波が私から離れない。 「お母さ~ん!」 美波の頬の涙を拭きながら、「一緒に寝る?」と聞くと、美波は泣きながら、「うん。」と答えた。 お風呂に入ると言う私に、「一緒に入りたい」と言って、一緒にお風呂についてきた。 トイレにまで、ついてきた。 私が帰ってくるまで、よっぽど不安だったのだろう。 母によれば、夜のニュースで、津波や地震の映像を見た真夏と美波は泣き出したそうだ。 「お母さん、あの中にいるの?」 「お母さん、生きているの?」 「なんで、電話つながらないの?」 と、泣きながら、母に何回も聞いたそうだ。 寝かそうとしても、テレビの映像が頭に焼き付いてしまったようで、全然寝付けなかったようだった。 無理もない。 大人だって、あの映像を見たら、衝撃が大きすぎる。 同じ日本で起こっていることとは思えないくらいの、胸に突き刺さるような映像だったのだから。 和人がいなければ、私は朝になっても、家に着いていなかったかもしれない。 電車が完全に止まってしまい、タクシーもすべて出払ってしまっていたあの夜。 私が家に帰ることができたのは、本当に奇跡だと思えた。
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