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次の日からゴールデンウィークが始まるという日。
私は取材で、朝から電車で遠くへ出かけなくてはならなかった。
事前に、大学時代からの友人・美佳と、カフェでランチしようと約束していた。
カフェの周りは木が多く、緑がとてもきれいだった。
待ち合わせの時間にカフェに着くと、もう美佳が来ていた。
「お疲れ~。」
喫煙席に座って、たばこを吸っていた。
美佳は39歳になっても独身を貫いている。
背が高くて、やせていて、上手に洋服を着こなしていて、いつも若々しくてきれいだ。
だけど。
「別にお局でもいいし~。生きているなら、気軽に生きて生きたいのよね~。」
「結婚なんてめんどくさいから。私、家政婦になりたくないし。」
そんなことをよく言っている。
男性と恋愛はするけれど、一緒に住むのも結婚するのもイヤで、縛られたくないらしい。
だから、美佳も男性を縛ることはないらしい。
ある意味、それができるなんてうらやましいし、すごいと思う。
でも、私には真似できない。
ランチメニューを選んで注文すると、美佳が早速聞いてきた。
「どうよ、まだ離婚決まらないの?」
「まだだよ~。」
ため息混じりに私は答えた。
「マジでしつこくない?」
39歳といっても、美佳はまだ大学生のままで止まっているかのような言葉使いだ。
でも大学時代に戻れたようで、私は楽しい気持ちになれる。
「いい加減、うんざりしてきたよ。」
「で、働き出したの?」
「まだみたいだよ。」
「はぁ?」
美佳はちょっと怒り気味に言った。
夫は夢を追いすぎて、働かなくなった。
私が仕事に復帰したのをいいことに、仕事を勝手に辞めてしまった。
私は、夫のために働き始めたのではなく、これからかかってくる子供達の学費の足しになればと思って、会社を探した。
もちろん、経験を生かせればいいなとは思っていた。
結婚前と同じ編集の仕事に就けて、満足した。
だけど、仕事を辞めて時間ができてしまった夫の束縛が始まり、私に生活費を頼るようになり、挙句の果てに浮気をした。
「お金、送ってこないの?」
美佳は、かなりムッとしていた。
「送ってこないよ。」
「まぁ、送れるだけのお金、持っていないもんね。」
ちょっとイラッときたようで、美佳は灰皿に吸っていたタバコを押し付けて消した。
口から煙を吐くと、テーブルに頬杖をついた。
「マジ、疲れるね。」
「うん。」
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