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「いつ終わるんだろうねぇ・・・ねぇ、別居してから、どのくらい経った?」
「2年ちょっと。」
「きっついなぁ。」
「うん・・・」
まったく終わらない泥沼の離婚劇に、美佳も呆れていた。
「だったら、働けっつーの。」
美佳が吐き捨てるように言った。
「でも、働いたところで、陽子の気持ちは戻らないかぁ。」
美佳はそう言いながら、私の顔を見た。
「ムリだよ。あんな病気持って帰ってきて、私にうつしたんだし。」
「2週間も入院していたしね~。」
浮気をしていた夫に淋病をうつされた私は、なかなか治らず、長く飲んでいた治療薬が原因で体調を崩し、別の病気を発症した。
40度の熱が下がらず入院となり、更に、弱っていた体に薬疹が出て、退院できなくなった。
結果、2週間も退院できなかった。
入院中、ストレスから何回も吐いた私は、あまりにも不安で、「エイズ検査をして下さい」と担当医に頼んだ。
検査結果は、退院後に出るということだった。
外来で結果を聞きに行った時、
「エイズ検査しているけど、なんかやましいことでもあるの?」
と、私と同じ年くらいの女性の看護師に言われた。
あまりにも配慮に欠ける言葉で、私は目の前が真っ白になり、過呼吸を起こした。
処置室に運ばれ、口にビニール袋を当てられた。
飛ぶように来てくれたらしい看護婦長さんが、「落ち着いて」と、ビニールを持ってくれた。
エイズ検査の結果は陰性だった。
だからって、別に夫を許すつもりはなかった。
そんなに簡単に許せることなんて、できなかった。
私の泥沼の離婚話をすると、どうも雰囲気が暗くなってしまう。
頼んだランチが来て、私は話題を変えた。
「美佳は、彼とどうなの?」
5ヶ月前からつきあい始めた美佳の彼は、3歳年下の36歳で、ガソリンスタンドの店長をしているらしい。
「うん、順調かなぁ。」
美佳の言い方を聞くと、テンションが高いわけではないので、本当に?と、いつも思ってしまう。
でも、美佳はいつもこういう言い方で、静かに答える。
「ちゃんと会えているの?」
「たまにね。私あんまり会わなくても平気だからさ~。」
「それ、不思議だよ。私なんて、いつも一緒にいたいと思うもん。」
「・・・なんかね、めんどくさいの。一緒にいるのが。」
「なんで?」
「結婚の話を出されるのが、めんどくさくて。」
「彼、36だもんね~。そりゃあ、意識するよね。」
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