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「悪いけど……他に好きなヤツができたんだ。」
彼は私の目を見ずに、そう言った。
私は精一杯、震える声を絞り出して聞く。
「心変わりした……ってこと?」
彼は気まずそうに、目をそらしたまま答える。
「そう……なんだ。ごめん。これ以上、説明しても傷つけるだけだから。……ごめん。」
何も言えないまま、何も聞けないまま。
彼は、私一人を教室に残して、去った。
何が起きたか、分からない。
思考が追いつかない。
今、他に好きな人ができたって言った? 嘘、でしょ……?
「わぁぁ……ん!」
頭では、理解できない。
でも、涙があふれる。
教室なのに、声も抑えきれない。
「うぅ……ぐ……」
10分近くそうしていただろうか。
そのとき。
『ポンッ』と、私の頭に何かが触れた。
「なに泣いてんの?」
上げた視線の先には、かなり明るい茶髪に、端正な顔立ちの男の人がいた。
……加藤 敬(かとう けい)だ。
私の頭に、加藤くんの手がのっていた。
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