涙とてのひら

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「でも、今は知らなくていいんじゃね? そのうちアイツが付き合ったらわかるだろうし……すぐ知ろうとしない方がいいと思う」 加藤くんに言われて、考えてみる。 譲の好きな人。 知りたくて仕方ないけど、本当は知るのが怖い。 もし知ってしまったら…… きっと譲を失った悲しさや寂しさより、そのコへの嫉妬でいっぱいになってしまう。 そんな真っ黒な私、いやだ。 「うん、そうだね。知らないでおく」 私の返事に、加藤くんが切れ長の目を細めて笑う。 「お前って物分かりいいのな。もっと『知りたい!教えて!何なら調べて!』とか言うかと思ったぜ」 「加藤くんにそんなこと言えないよっ!!!!」 私が加藤くんに頼みごとなんて。 今こうして話を聞いてもらってるだけでも不思議なのに。 ハッキリ言って、加藤くんはかなりイケメンだ。 その上、頭もよくて、雲の上の存在だと思ってた。 「……加藤くんって、意外と優しいんだね」 「意外って何」 加藤くんが眉間にシワを寄せる。 私は、ハッと口元を押さえる。 思ったことがつい口に出てしまった。 それも褒めたつもりが、お気に召さなかったみたい。 「お前さっき、俺とあんまりしゃべったことないって言ってたのに、意外って何だよ」 加藤くんは、すっかり呆れ顔。 確かに、ほとんどしゃべったことないヤツに意外とか言われたくないよね。 怒った様子はないけど、不満そう。
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