一章

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一章

……懐かしい夢を見た。 碧い海など見当たらない。潮の香りすらない、暗褐色の世界。モノクロの無声映画を観ているような静けさの中で。彼女は、いつも僕に笑いかけてくれた。俺も彼女に答えようと声を発しようとした。しかし、いくら口を開いても声が出ない。自分でもわかっていたことなんだ。何度、その名を叫ぼうとも―彼女は、戻らない。
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