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静寂が再び二人を包む。
でも、それは決して嫌なものではなくて───。
此処に来て初めて感じた、二人だけの時間。
────なんだろう。
なんだろう、この気持ち。
オレは思った。
莉子の方を見ながら、自分自身に問いかける。
「・・・・・・アオバ・・・・・・くん」
莉子が近づいてきた。
これまで一度も見せたことの無いような、言いようの無い表情をして。
ゆっくり、ゆっくり、オレとの距離を縮めていく。
近付いて来る彼女の茶色い瞳に映っているのは、間違いなく自分自身。
眠りにつく前と同じ錯覚に陥りながら、
オレはまるで石にでもなったかのように
身動き一つせず、ただただその場に立ち尽くすばかりだった。
部屋の電気は、いつのまにか消えている。
底無しの闇が広がる中で、莉子は手の指を一本一本強く絡めて、
オレの手を握った。
そして、まるで全てを委ねるかのようにオレの身体に身を預ける。
彼女の心臓が早鐘のように打っているのが分かった。
そして自分のそれも、きっと────。
「・・・・・・ずっと一緒にいても・・・・・・いい?」
少し躊躇いがちに莉子が言う。
その一挙手一投足、動きや声の全てが、反則的に可愛かった。
「・・・・・・何言ってんだ。当たり前だろ」
赤面しながらそう言って、オレは絡めた手を少し強く握った。
彼女は驚いたように一瞬オレを見上げたが、すぐにまたオレの胸に
恥ずかしそうに顔を埋めた。
「・・・・・・ありがとう、アオバくん」
重なり合ったふたつの影。
月光だけが降り注ぐ部屋の中で、青の塔の夜は更けていった───。
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