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始まりはいつだっただろう。
そもそもの始まりは。
部活で剣道の稽古を受ける為に、
家から自転車で駆けてきたはずだった。
確かにそうだったはずだ。
昨日武道場にいた、外部コーチの名前はなんて名前だったかな。
確か、もの凄く変な名前だった気がするんだけど。
まぁ、私も人のことは言えないか。
凪なんて、あんまり見ない名前をしてるんだから。
────帰ったら、お兄ちゃんに話してみようかな。
いつもマイペースで、面倒くさがりで・・・・・・
でも、それでいて優しいお兄ちゃん。
髪が生まれつき青いせいで、よく不良達に絡まれてたっけ。
そう言えば、お兄ちゃんはどこに行ったんだろう。
学校に行ってるはずなのに、昨日は家にも帰ってこなかったし。
携帯に連絡しても繋がんないけど・・・・・・まぁいいや。
あれ・・・・・・雨まで降ってきた。
これは多分、夕立だよね。
『ねぇ・・・・・・君』
突然、目の前に黒のパーカーに身を包み、
フードを深く被った男の子が現れた。
「・・・・・・なんですか?」
『君は、こんなところで何をしているの?』
「えーと・・・・・・実はちょっと考え事をしてて」
『・・・・・・もしかして、それってお兄さんのこと?』
「え!?なんで分かったんですか!?」
『顔にそう書いてあるよ』
男はそう言って、私の方を見ながらクスクス笑う。
『・・・・・・お兄さんに会いたいのかな?』
「べっ、別にそんなこと!
・・・・・・ただ、何してるのかなぁと思って、
ちょっと心配になっただけです」
思わず口から出た、見え見えの虚実。
しかし、次に男の子の口から出てきた言葉は、
私がまったく予想していなかったものだった。
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