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校門を後にした僕らは、手を自然と繋いだままニコニコ名物、「天国と地獄は表裏一体坂」と呼ばれる傾斜のきつい坂を歩いていた。てか、なんてネーミングセンスしてるんだ。よく浸透したものだと思う。
「おかしいよね!あさみったら本当にずれてるんだよ」
学校での出来事を笑いながら話す彼女 六車 彩華(むぐるま さいか)は、本当に綺麗だと思う。
腰の辺りまで伸びた綺麗な黒髪は、大和撫子という言葉がしっくりくるし、小ぶりな顔に、少し垂れ目なところも愛らしさを表現している。
「でね!でね!」
必死に友達の話をしてくるそんな彼女の可愛らしさとか。
あと春の陽気とか。春の陽気とか。ここ重要。
言い訳がましいけど、もろもろにやらてたんだよね僕。
「あのさ!」
「どうしたの流雨塗君?」
急に大きな声を出したからか、彼女が少し驚く。そのキョトンとした顔に萌えたのは、春の陽気のせいだ。絶対。
僕は一度深呼吸をしてから切り出した。
「家に来ない?」
何で言っちゃったんだろ?
言ってからものすごく後悔が進撃してきた。女型か?僕は完全に奇行種でした。
「…うん」
「え?」
その消え入りそうな返事に、時間と思考が僕の中で止まってしまった。
「だから…その…いいよ」
余程恥ずかしかったのか、桜の花びらのように、頬をピンクにして俯く彼女が意印象的だった。
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