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「流雨塗君!ドッキリなんでしょ!?悪い冗談なら早くやめて!」
目に涙を浮かべる彼女。
部屋に通してそうそうに、使用人達に襲わせ、制服からメイド服に着替えさせ鎖に繋いだのだから仕方ない。
でもこの現状は、この後看板を持って誰かが出てくるわけでもない。
「て、おい!」
突如、彼女と僕の間を割って入る声が部屋に響き渡る。
看板を持っているわけではない。
彼女はただ驚き声の主を見る。だが僕は、使い古したツッコミをする声の主に、ごみを見るような目線でつぶやく。
「なんだ最武子(もぶこ)か」
「なんだって何よ!」
ビジューをふんだんにあしらった白のブラウスに、ブルーデニムのショートパンツをはいた金髪のツインテールが特徴的な少女は、僕の妹の普丸 最武子である。そんな最武子改めモブ子は、部屋の入り口に仁王立ちし、可愛い服装とは反対に鬼のような形相で叫んでくる。
「あんた女なんか勝手に連れ込んで何してんのよ!?」
髪とブラウスを揺らしながら、僕に詰め寄ってくる。
「あんた!まさかこの子を!?…調教師とか流行んないわよ!」
「調教師…」
心底可愛そうなものを見る目をしてしまう。
「お前はタウンページで、調教師でも検索したんですか?あ?よしずみさんかコラ」
「よしずみさんなめんじゃねーよ!コノヤロ!」
モブ子の背中なのかわからない、薄い胸倉をつかむ。
「モブ子!天気予報なんてのは、靴とばせばわかんだよコラ」
「天気ってのは、よしずみさんにしか、予報できないもんなんだよ。資格もってんの?靴予報士の資格持ちですか?ユーキャンですか?てか、背中と胸の区別ぐらい、つくぐらい立派に発展してんのよ!声にだしてんじゃないわよ!」
ヒートアップしていく僕らだった。
「ユーキャンなめ」
―――びちゃびちゃびちゃあ
不快な音と、鼻をつく臭いが僕らの元に漂ってくる。それと同時に、部屋が一瞬で凍りつくような錯覚に囚われる。
「おえ…ふう。」
部屋の入り口には、車椅子に乗る女性が嘔吐していた。
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