プロローグ -4

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「あらあらあ、御見苦しいところをお見せして申し訳ございません泥棒猫さん」 そう言葉を言い放つと、顔を歪ませた。 きっと笑っているつもりなのだろう。しかし、怖い。その表情は、走ることの出来ないウサギを目の前にした、ライオンのように凶悪だ。 「ああ、あ、ああ」 包帯で覆われているはずなのに、凶悪な視線を向けられた彼女は、全身を大きく震わせていた。 部屋には、姉さまの嘔吐したものの強烈な臭いだけでなく、鼻につく臭いがもうひとつ混ざる。 彼女は失禁していた。 彼氏に監禁されるという理解不能な極度の緊張状態に、得体の知れない姉さまという恐怖に耐え切れなかったのだ。 「あらあらまー、お手洗いでしたら、この部屋を出てすぐ右手ですのに…」 姉さまは右手で口元を隠す。 「はしたないこと」 今日一番の笑顔を浮かべた。 「まあ、平民風情には、猫ほどの躾もされていなかったのでしょう。でも、ワタクシは平民にも心が寛大ですので、許してさしあげますわ」 登場してすぐに、ゲロを吐く人に躾どうこう言われたくないだろう。 「モブ子ちゃああん」 「は、はい!」 急に呼ばれたことに驚いたのか、それとも自分が標的になったことに覚悟したのか、モブ子からも少し異臭がした。 でも大丈夫だ。うちの家庭は皆、バンバーズ着用とした勇者だからな。工業排水みたく垂れ流しの心配無用。 「このドタニシ!早く車椅子を押しなさい!こんな痴女が排泄したドグサレ空間に、この桜のように清楚で可憐なワタクシが1秒でもいられるわけないでしょ!?気づけないなんて、ほんとドタニシね!」 「すすいません!」 すぐに姉さまに駆け寄り、車椅子を押そうとする。 「何勝手にワタクシの車椅子に直に触れようとしているの!?本当に公衆便器並みに立場をわきまえなさい!」 「すすすみません!!」 理不尽な言葉には何もいえないが、それが普丸家のルールなのだ。 すぐさまに、手袋をするモブ子。 「わかればいいのよモブちゃん」 ようやく二人は、部屋を後にした。 「ねええモブちゃん、お姉ちゃんの聖水飲みたい?」
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