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僕はこの状況を一言で言い表すのなら
『絶体絶命のピンチ』
その言葉に尽きるのであろう。
このSMルームのように、鎖やらムチが散らばる自宅の一室で、目の前には僕の彼女、六車 彩華(むぐるま さいか)が、整った顔を憎しみに歪ませ、その手に持ったナイフで僕の心臓に突き立てているのだから。
「あは、はは、流雨塗、あんたが、わ悪いんだから」
僕は、朦朧とした意識の中、視線は彼女を捕らえる。
泣いていた。
彩華は僕の胸の中で泣いていた。
その両手を真っ赤にしながら
悲しみ
後悔
憎しみ
全ての感情をごちゃ混ぜにして。
「あんたが!悪いんだからああ!」
全ての感情を吐き出すように叫んだ。
「あああああああああああああ!!!」
僕の胸にしがみつく彼女の姿を最後に、僕は目を閉じた。
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