プロローグ -5

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「おい流雨塗、幼女が家に押しかけてくる夢でもみたのか?」 「ムラ!お前と一緒にするな!」 チャイムが鳴ると同時に僕の前の席に座る、完璧にセットされたすじ盛りに、端整な顔の男、 山田 太郎村正(やまだ たろうむらまさ)が、僕に向かって物騒なことを言う。 「幼女はいいぞー、幼女は」 その整った顔が歪んでいく。 僕は友達の人選をミスしてしまったようだ。 1年の時からクラスが同じで、2年になってからも一緒のクラスになったこともあり、こうしてたわいも無いやり取りをしている。 「ぐへ、へへ」 まったく。こいつは、これさえなければ普通にモテるんだろうに。 この現代社会が生んだモンスターに、心の中で黙祷をささげよう。 「ムラ。校庭に幼女が助けを呼んでるぞ」 「先生!おじいちゃんが死んだので早退します!」 休み時間に入り、先生などもう教室には居ないのだが、律儀に確認を取るムラは世界記録を更新する勢いで教室を後にした。 そんな、風になった彼にもう一度黙祷をささげよう。
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