あの頃の私は…

2/6
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
ジリジリとセミが元気よく鳴き、オープンカフェの店先の向日葵は、まっすぐ前を向き、誇らしげに咲いている。こんなに暑いのに、無邪気に咲いている彼らをみていると、紫外線なんてまったく気にしていなかったあの頃のことをつい、思い出してしまう。 友だちと過ごした日々、初めての恋……そして、それらの楽しかったすべてに終わりを告げたあの日のことを…… …… 中1の冬。期末テストもようやく終わって、気分はすっかり、冬休みだった。 ある日の放課後。 いつものようにアタシは彼に、体育館の裏に呼び出された。 「おまたせ~、タクマ♪話って何?そうそう……今日さ、いっしょにカラオケ行かな……あれぇ?」 彼の顔をのぞきこむと、恐ろしいくらい真剣な目をしていた。 「……どうしたの?目……コワイよ……」 「あのさ……」 「なに?」聞き返すのが怖かった。 「……オレたち……別れよう……」 「えっ……」 「……別れて欲しい……」 「ちょっ……イミわかんない……なんで?」 「ごめん……ほかに……好きな人ができた……」 「冗談……だよね?」 「……」彼は、俯いたまま、首を横には振ってくれない。それが答えだった。 「なん……で……?」 「本当に……ごめん」 そう言ったまま去っていく彼の背中に何一つ、文句も言えないまま、アタシは、泣き崩れた。 一生分の涙を流してしまったんじゃないかと思うくらい、泣いた。 ……
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!