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ジリジリとセミが元気よく鳴き、オープンカフェの店先の向日葵は、まっすぐ前を向き、誇らしげに咲いている。こんなに暑いのに、無邪気に咲いている彼らをみていると、紫外線なんてまったく気にしていなかったあの頃のことをつい、思い出してしまう。
友だちと過ごした日々、初めての恋……そして、それらの楽しかったすべてに終わりを告げたあの日のことを……
……
中1の冬。期末テストもようやく終わって、気分はすっかり、冬休みだった。
ある日の放課後。
いつものようにアタシは彼に、体育館の裏に呼び出された。
「おまたせ~、タクマ♪話って何?そうそう……今日さ、いっしょにカラオケ行かな……あれぇ?」
彼の顔をのぞきこむと、恐ろしいくらい真剣な目をしていた。
「……どうしたの?目……コワイよ……」
「あのさ……」
「なに?」聞き返すのが怖かった。
「……オレたち……別れよう……」
「えっ……」
「……別れて欲しい……」
「ちょっ……イミわかんない……なんで?」
「ごめん……ほかに……好きな人ができた……」
「冗談……だよね?」
「……」彼は、俯いたまま、首を横には振ってくれない。それが答えだった。
「なん……で……?」
「本当に……ごめん」
そう言ったまま去っていく彼の背中に何一つ、文句も言えないまま、アタシは、泣き崩れた。
一生分の涙を流してしまったんじゃないかと思うくらい、泣いた。
……
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