あの頃の私は…

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(もう……10年経つのか……) 「ふぅ……」少し短めの溜息をついて、手元にあったエスプレッソを口に運ぶと、どこか懐かしい匂いを漂わせていた。 彼に出会ったのは、中学に入学してすぐのころだった。 グラウンドでサッカー部の練習を見ながら、下校していると、そのなかでも、際立ってサッカーのうまい男子に目を奪われた。 それが彼だ。 完全なアタシのひとめぼれ。 アタシの猛烈なアタックの結果、彼とつきあうことになり、中学生なりにも、恋に落ちた。キスも何度もした。 クラス中でヘンな噂を立てられたりもしたけど、そんなことは、気にしなかった。 とにかく、彼と一緒にいられるだけでうれしかったのだ。 だけど、そのシアワセな時間は、あっと言う間に終わりを告げた。あのときの彼のたったひとことで……。 アタシは、彼を恨もうとした。恨まなければならなかった。でも、恨めなかった。 彼が大好きだったから……。 それでも……許せなかった……どうしても許せなかった。 彼から心を奪ったその人を……。 その彼女は、かわいいし、歌も上手いし、男子にも女子にも人気があった。本人は、自覚がなかったみたいだけど……。アタシにとっても憧れだった。友達になりたいと思ってた。 だから、よけい、悔しかった。
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