あの頃の私は…

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その頃のアタシは、本当に愚かだった。 アタシは、彼を奪った彼女に対し“陰湿なイジメ”という人間として最低な手口で自分の悔しさを押し付けていた。 もちろん、そんなことをしたところで、自分の憂さや鬱憤が晴れることなんてない。それどころか、イライラは募るばかりで、それが自分に対してであることがわかったとき、罪悪感と懺悔の気持ちに押し潰されて、また涙がボロボロこぼれた。 アタシは、必死に彼女に謝った。謝っても許してもらえない、その覚悟はできていた。 でも、彼女は許してくれた。どうしようもなく、馬鹿なアタシを心から許してくれた。 あとから聞いた話だけど、彼女は、彼からの告白を断っていたらしい。 〈タクマくんとは付き合う気になれない。ユメちゃんをフったタクマくんとは……〉 本当に愚かなアタシだった。 そんな彼女とは、今ではもう、かけがえのない親友だ。 「ごめんっユメちゃん、待った?」 ずっと聴き慣れている心地よいソプラノの声に目をやると、その親友、高木光恵が少しでも待ち合わせに遅らせまいと走ってきてくれたのだろう、息を切らせながら申し訳なさそうに手を合わせていた。 「ううん……アタシも今着たトコ」 「ホント?よかった……じゃあ、すぐそっち行くね」 「うん」 彼女はカフェの木目調の扉を開けて中に入ると「今日も暑いね……」と左手で自分の顔を仰ぎながら、向かいの席に座った。
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