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低音の、甘い声音。
知らない、男の声だ。
「その1。まずは、立ち上がる!」
「え、ええっ!?」
またも、頭上から降ってきた命令口調の大きな声に驚いて、私は『シャキーン!』と立ち上がった。
「その2。落ちたモノを拾う!」
「は、はいっ!」
私の背後に立っているだろう声の主の姿を確認する暇もなく、更にかかった命令に、私は落ちた荷物必死で拾いあつめた。
そして、最後のノートに手を伸ばした時。視界に入ってきたのは、ノートを拾い上げる長い指先を持った大きな手。
その手は、デニム地のシャツに包まれた長い腕へと続き。その先には、同い年くらいに見える端正な顔立ちをした青年の、少し鋭い感じのする真っ直ぐな瞳があった。
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