03 追憶-1

8/10
前へ
/35ページ
次へ
低音の、甘い声音。 知らない、男の声だ。 「その1。まずは、立ち上がる!」 「え、ええっ!?」 またも、頭上から降ってきた命令口調の大きな声に驚いて、私は『シャキーン!』と立ち上がった。 「その2。落ちたモノを拾う!」 「は、はいっ!」 私の背後に立っているだろう声の主の姿を確認する暇もなく、更にかかった命令に、私は落ちた荷物必死で拾いあつめた。 そして、最後のノートに手を伸ばした時。視界に入ってきたのは、ノートを拾い上げる長い指先を持った大きな手。 その手は、デニム地のシャツに包まれた長い腕へと続き。その先には、同い年くらいに見える端正な顔立ちをした青年の、少し鋭い感じのする真っ直ぐな瞳があった。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4325人が本棚に入れています
本棚に追加