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「ねぇ、ねぇ、梓(あずさ)センパイ! 耳より情報仕入れましたよ~!」
ざわめきに溢れた、忙しない朝のロッカールーム。
いつものごとく、いつものように。
白ブラウスに濃紺のベスト、
プラス膝丈のボックススカートと言う、色気の欠片もないの会社の制服に着替えていたら、
同じ工務課の美加ちゃんが、語尾に音符マークが付いていそうなご機嫌ボイスで声を掛けてきた。
大学を卒業してから、6年間。
私が勤めているこの太陽工業は、県下一の規模を誇る鉄骨建築の会社だ。
簡単に言うなら、県で一番大きな『鉄工所』。
私が所属しているのは『工務課』といって、設計図から加工図をおこす仕事をしている。
設計士の『先生』が書いた設計図から、実際工場で製品が加工出来るように。
例えば、柱の1本1本の図面を書き、そこに必要な加工や寸法を書き入れていく。
平たく言えば『図面屋さん』だ。
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