The pilgrim

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 遠い、異国の街。  今より、遥か昔。  嵐の前を思わせる、流れる雲の早い夜。月が現れては消え、現れては消えを繰り返す、光と闇の交錯する頃。  二人の人間が対峙していた。  一人は、少女。その決して大きくはない身体は、雲のかげった闇に隠れて、今は見えない。  一人は、青年。教会の司祭服に身を包み、血に濡れた剣を携えている。月の光に照らされたそれはぎらぎらとした鈍い光を放っている。 「……聖女様――――」  青年が、一歩、少女に歩み寄りながら、言う。 「いや――――堕ちた聖女様、と言ったほうがよろしいか? それとも――――魔女、と呼ぶべきですか?」  淡々とした青年の声からは、そこにどのような感情が込められているのか、うかがい知ることはできない。  また、対峙する少女からも、闇に隠れて、その感情を察することはできなかった。ただ、その小さな身体は、血を流すのみだった。 「――――願わくば、あなたには聖女のままでいてほしかった。みなをその力で救い、奇跡を起こし、弱きもののために戦う、聖なる乙女……」
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