Mirror,mirror

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 白いミニスカートのワンピースに、短く黒いスパッツを穿いている。さらに足元は白のニーソックスに、編み上げのショートブーツと、深夜の裏道にはまるで不釣合いな、元気な少女の装いだ。  少女は後ろに迫る気配に気づいた様子はなく、ゆっくりと歩いている。  人影たちの歩みが速まる。堪えきれぬ空腹に耐えかねたかのように、よだれを垂らしながら、醜悪な表情で、少女に迫る。そして、大きく両腕を振り上げ、倒れかかるように少女に向かった、その刹那――――。 「あーあ、やっと来た」  少女が、まるで遅れてきた約束の相手が現れたように、のんきな声をあげた。  次の瞬間――――。  少女のショートカットが、紅く染まった。  振り返った少女の紅い瞳が、後ろに迫った死人の姿を見る。同時に、その左手が死人の片腕を、とても少女とは思えない、猛烈な力で引き込んだ。 「まずは一名様、煉獄へごあんなーいっ!」  さらに引き込んだ反動を最大限利用しながら、少女は右の拳を死人の顔面にたたきこんだ。  すまさじい打撃音とともに吹き飛んだ死人は、5mほど空を舞い、歩道の街灯にたたきつけられ、その鉄柱を大きく捻じ曲げると、ようやくその動きを止めた。 「やっば! またやっちゃった!」
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