Mirror,mirror

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 少女が、その西洋鎧の篭手のように奇妙に変化した両腕で、頭を抱えた。 「……ま、いっか。また経費で落とそう」  目の前に迫るあと二体の死人のことなどまるで眼中にない様子で、少女が場違いに朗らかに笑う。 「……経費っていうか、事務所で弁償だよね。今月に入って何回目さ? ……紅香」  紅香と呼ばれた少女の背後に、初夏だというのに茶色のコートにマフラー、手には手袋という姿の、呆れ顔の少年が現れた。その姿は不可思議なことに、ゆらゆらと宙に浮いている。 「……えーっと、こないだは路上駐車してた車を壊して、その前は民家のブロック塀を壊して、その前は電柱を……」 「……探偵事務所、潰れるよ?」  額に手を当てて、ため息をつく少年に、紅香ががなる。 「えーい、さっきからごちゃごちゃとうるっさーい! じゃあ、後は静馬がやればいいじゃん!」 「ええー、めんどくさいなあ。僕のほうは君と違って、バイト代出ないんだよ? まあ、守護霊がお金もらってもしょうがないけど……」  静馬と呼ばれた少年が、渋い顔で文句を言いながら、死人の前に立つ。
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