未知なるモノ

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2100年1月11日(月) 朝9時。カフェ・アレモン。テーブル席にはお客さんが4人。私はマスターとカウンターの中にいた。相変わらず渋いお店なのである。 「ユリちゃん、眠そうだね」 あくびしてるのをマスターに見られてしまった。 「すみません。ネットしてたら眠れなくなっちゃって」 ゼロのホームページに夢中になり、気づいたら3時半だった。 「若いねえ」 マスターと私はカップを磨いていた。 「カズキ君とは此処で待ち合わせかい?」 カズキ君は今日、成人式に出席する。私とナオは彼について行くことになっている。女子がどんな装いで来るのか偵察したかったのだ。 「そうです。急にシフト抜けてすみません。関係ないんだけど私も行ってきます」 「いいよ。今日はそんなに忙しくならないだろう」 マスターは優しくそう言ってくれた。 横浜市の成人式は横浜アリーナで行われる。式典は10時半から。対象者が多いので今年は3回に分けて行われるのだそうだ。ナオが店に入った来た。 「おー、ナオ」 ナオは私に手を振った。 「ナオちゃん、いらっしゃい」 「おはようございます」 ナオはマスターに挨拶して、ピンクベージュ色のコートを畳んでカウンター席に座った。 「カフェラテください」 ナオのいつもの、だ。マスターはにこやかに頷いてエスプレッソ・グラインダーに豆を注いだ。 「昨日は盛り上がったね」 「ごめんね、付き合わせちゃって」 私はナオにお冷を出した。 「ううん、楽しかったよ。最初は握手攻めでびっくりしたけど。でもさ、ユリってすごいね。あの人達のリーダーなんでしょ」 「リーダーじゃないよ。私ハッキングのスキルなんかないし。マスコットガールみたいなもんよ」
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