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家に帰って、ゆうりくんをベッドに寝せた。ベッドの横の床に座れば、彼の寝顔をぼんやりと見つめた。 前…まだゆうりくんが俺の存在を知らない時、学校から帰っていると遠くにゆうりくんを見つけた。大雨の日だった。俺は、彼のあとをついて行った。 暫く歩き進めれば、ピタリと足が止まって彼の体は横を向いた。彼の目線の先には、一つのダンボールが置いてあった。彼はしゃがんで鞄をあさっていた。ここからじゃ、よく見えないけれど。それから立ち上がった彼は、一度傘に目を向けてからゆっくりとその傘をダンボールに被せ、そのまま歩き出した。一瞬にして、彼はびしょ濡れになっていた。 ゆうりくんの姿が見えなくなってからダンボールの所に走った。彼が置いた傘の下には小さな子猫が3匹も居て、美味しそうに牛乳を飲んでいた。 やっぱりゆうりくんは凄いと、そう思った。どうしてここまで出来る?どうして自分を犠牲に出来る?もしかしたら彼は、人に死んでくれと言われたら死んでしまうかも知れない。あいつを殺してくれと言われたら、殺してしまうかもしれない。自分の感情を圧し殺して。それが、凄く凄く、怖いんだ…
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