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夜の森の奥、三体の魔物が石造りの祭壇を取り囲んでいた。
緑色の鱗に覆われた二足歩行の魔物たちは、祭壇の周りにせっせと花や木の実を備えている。そしてその祭壇の上には20cm程の小さな妖精が捕らえられていた。両腕と透き通るハネが紐で固定されている。
「あなたたち! 私を捉えて一体どうするつもりですか!」
「シュフフ、キサマハ魔王サマヘノ生贄トナルノダ」
「魔王ですって!? 100年前に勇者に滅ぼされたのではなかったのですか!?」
「ワレラガ魔王サマが人間ナンゾに滅サレルモノカ。長キ眠リカラ覚メ、再ビチカラヲ蓄エテオラレルノダ」
「魔王サマノ一部トナレルコトヲ光栄ニオモウガイイ」
「妖精ゾクノ持ツ膨大ナ魔力ト癒シノチカラガアレバ魔王サマノ復活ニオオキク近ヅクダロウ」
「そんな!!」
妖精の悲痛な叫びが響いた。
そもそもこの世界に魔王が生まれたのは今から120年前だ。
大陸最北端の山岳地帯に突如として巨大な城が現れ、魔王を名乗る者が魔物の大群を引き連れて人間たちの国を襲い始めた。統制のとれた魔物たちの軍は瞬く間に人の町を瓦礫と変え、国境線を押し広げていったのである。
しかし、大地の半分が魔物に奪われた時、精霊より神器を受けし三人の英雄が現れた。
光の聖剣を与えられたのは貴族の長男、アレン=アルテス。
大地の弓を与えられたのは辺境の村の狩人、カイル。
浄化の杖を与えられたのは教会のシスター、メリンダ。
国境も民族も関係なく世界中の人々が三人の下に集い、多くの犠牲を出しながらもついに魔王を打ち倒したのだ。
勇者とは、三人のリーダーとして活躍したアレンに与えられた称号である。
魔王討伐後、統制を失った魔物たちは山や森に隠れすむようになり、人間の社会に平和が訪れたのであった。
しかし今、長く続いた平和がほころび出したのである。
「ソレデハ儀式ヲ始・・・」
生贄の儀式がまさに始まろうとしたその時、突然背後でパキッという枯れ枝を踏むような音が聞こえた。
すぐさま反応した8つの目に映るのは、剣を構えこちらに向かってくる青年の姿だった。
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