2012年 夏。

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 それぞれの新しいお友達とそれぞれの楽しい時間を過ごした一式翁と孫夫婦は、夜になってとある交歓会の場に招かれていた。 陸攻とくるみは達哉たちの新たな鉄道仲間として。そして一式翁は、友美曰く交歓会のスペシャルゲストとして。 南陵高校鉄道研究部とヒラテツ倶楽部の2名そして一式翁と孫夫婦は、それぞれ同じ安中旅館に宿を取っていたのだ。 一式翁は内心、安徳(やすのり)君のお陰で早速御仏の御加護があったわいと喜んでいる。安徳とは安覚和尚の本名なのは言うまでもなかった。  一式翁が友美に話をねだられたのは、岡本温子が岡本家秘蔵の草軽電気鉄道の資料を一同に披露してからすぐの事である。 10畳程の広さがある和室の中には、南陵高校の校長先生兼鉄道研究部名誉部長である白國美千(しろくに=みち)を筆頭とした南陵高校鉄道研究部部員たちとヒラテツ倶楽部の二人、そして一式家の三人が顔を揃えていた。 「南陵高校鉄道研究部の皆さん。こちらのタンメー、もとい一式陸攻さんは、何とあの草軽電気鉄道に乗った事があるんです!」 少し上気しながら友美。殆どの者が文字通りあっと言う中、温子は比較的冷静であった。 それもその筈である。 なぜなら温子は一式翁を見てすぐに、友美に見せた写真に映っていた海軍士官らしい若者の1人が若き日の一式翁に間違いないと気付いたのだ。
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