2012年 夏。

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やがて温子が口を開く。 「先程ご覧頂いた写真には、若き日の大々叔父豊が映っています。 あの… トヨじいちゃんはどんな人でしたか?」 少し声を震わせながら温子。もちろんマイナスの意味などではない。写真でしか知らない大々叔父を直に知る人を前に、喜びと興奮そして好奇心を抑え切れないのであろう。 やがて一式翁がゆっくりと口を開く。 「岡本豊さんは私と仲間たちの大恩人です。 私は岡本さんのお陰で兵学校に入校出来たようなものですから。 そして岡本さんは、私の一番の親友の大恩人でもあります」 「…ありがとうございます… トヨじいちゃん今頃手荒く喜んでいます…」 いつしか涙ぐんでいる温子。話した事はもちろん遊んで貰ったこともない筈なのに、何故か涙が溢れて来るのだろう。 その理由は温子にしか分かるものではない。 友美は何も言わずに、温子の肩をそっと抱きしめるのであった。
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