2012年 夏。

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 時は常に流れ続け、いつまでも変わらないものなどそうそうあるものではない。 今日日中学生どころか、小学生でも訳知り顔で語る事がある理屈である。 だが、いざ横川の地に立ってみると一式翁は、何だか心の中に大きな穴が開いたような気がしてならなかった。 「ちょっと散歩でもしてくるか」 一式翁はふとそう呟くと、ホームの中程にある跨線橋へと歩いて行く。 その足取りは今年96歳の年寄りのものとは思えぬ程軽やかに見えるのだが、本人にしてみればその足をまるで鉛のように重く感じていた。
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