2012年 夏。

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 その日平成鉄道学園乗務員養成コース3年甲組生徒読谷友美(よみたん=ともみ)は、クラスメイトの岡本温子(おかもと=あつこ)と一緒に電車にて横川駅へと赴く途中であった。 温子は長野県軽井沢町の出身で、両親は旧三笠ホテルの近所に明治の頃から店を出している洋食屋の五代目店主である。 そんな温子が何故ヒラテツこと平成鉄道学園の乗務員養成コースに入学したのかと言うと、写真でしか知らない父方の大々伯父から強い影響を受けたからであった。 温子の大々伯父岡本魅覚(みかく)は、かつて軽井沢と草津温泉とを結んでいた軽便鉄道 草軽電気鉄道 の機関士だったのである。 「! じゃあ、アッコの曾祖父さんあの映画に出てたってコトじゃない…」 目を丸くしながら友美。友美の言うあの映画とは、昭和26年に公開された某映画の事である。 その某映画は二つの事で有名な映画であった。 まず、日本初の総天然色映画であること。 そして、現役時代の草軽電気鉄道をカラー映像で見る事が出来る世界でただひとつの映画であること。
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