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「……そうだね。騙すようなことして、ごめん」
深く頭を下げる久保田さんを見て、じわりと目頭が熱くなった。
そうか。
私は騙されていたんだ。
全部、嘘だったんだ。
優しい笑顔も、甘いときめきも、温かい言葉も、全部。
こんな私でもいいんだ、って。
誰かに必要とされてるんだ、って。
少し自信を持てたのに。
令子の言う通りだった。
嘘なんて、簡単につけるんだ。
馬鹿みたいに正直に、信じちゃダメなんだ。
「別に。……それに私も、久保田さんを本気で好きだったわけじゃないから」
こんなの、ただの負け惜しみにしか聞こえないんだろう。
恋愛経験値がないことくらい、初めからきっとお見通しだったはずだ。
浮かれて尻尾を振り回していた私は、一体どんなに滑稽だったことか。
あぁ、こんなことなら、おとなしく妄想で終わっておけば良かった。
そしたら、何も知らずに済んだのに。
変わろう、なんて勇気、出すんじゃなかった。
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