18/23
1945人が本棚に入れています
本棚に追加
/189ページ
「……そうだね。騙すようなことして、ごめん」 深く頭を下げる久保田さんを見て、じわりと目頭が熱くなった。 そうか。 私は騙されていたんだ。 全部、嘘だったんだ。 優しい笑顔も、甘いときめきも、温かい言葉も、全部。 こんな私でもいいんだ、って。 誰かに必要とされてるんだ、って。 少し自信を持てたのに。 令子の言う通りだった。 嘘なんて、簡単につけるんだ。 馬鹿みたいに正直に、信じちゃダメなんだ。 「別に。……それに私も、久保田さんを本気で好きだったわけじゃないから」 こんなの、ただの負け惜しみにしか聞こえないんだろう。 恋愛経験値がないことくらい、初めからきっとお見通しだったはずだ。 浮かれて尻尾を振り回していた私は、一体どんなに滑稽だったことか。 あぁ、こんなことなら、おとなしく妄想で終わっておけば良かった。 そしたら、何も知らずに済んだのに。 変わろう、なんて勇気、出すんじゃなかった。
/189ページ

最初のコメントを投稿しよう!