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「俺はね。ただ君を、彼から引き離してほしいって頼まれただけ」
「ははっ」
納得の答えに、思わず乾いた笑いが漏れる。
「……佳奈さん、に?」
掻き上げた髪を握る手にぎゅっと力がこもる。
もう、一体これがなんの感情なのか分からない。
悲しくて、悔しくて、腹が立って、情けなくて……
こみ上げてくるそれらが、喉の奥を塞いで、胸が苦しくなる。
「不安になるんだって。彼の口から、君の名前を聞くたびに」
「私なんか……不安になるような相手でもないのに」
私と初めて会った時の安堵の表情を思い出して、刺々しくそんなことを言う。
嫌だな。
私、今、すごく嫌な奴だ。
だけど、佳奈さんへの苛立ちを抑えられない。
「相手が誰とか、関係ないんじゃない。好きだから不安になる、ただそれだけのこと」
「でも、好きだったら何をしてもいいわけじゃない」
思わず反論する言葉に熱がこもる。
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