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「りっちゃん!」
待ち合わせ場所に着くと、弾むような明るい声が飛んできて、私たちは揃って声がした方を振り返った。
「佳奈」
その先で、こちらに手を振る可愛らしい女の子。
“佳奈”だということは、律の呟きを聞かずとも分かった。
毛先にふわりとウェーブがかった亜麻色のボブ。
艶とハリのある白い肌に、二重瞼の大きな黒目がちの瞳。
睫毛も長くてふさふさで、まるで人形みたい。
華奢で小柄で、洋服も可愛く着こなしていて、誰が見ても納得の、絵に描いたような可愛らしい女の子だ。
これがまた、律と二人、並んでいると絵になるから、私がこの場に居ることが間違いなんじゃないかって思えてくる。
というか、完全に場違い。
邪魔者以外の何者でもない。
更には、自分が今まで以上に貧相に思えてきて、恥ずかしくなる。
「はじめまして!村井佳奈です。今日はわがまま言って付き合わせてしまって、すみません」
そんな私の手をしかと掴んで、にこやかに“佳奈”は言った。
まばゆい程の愛らしいその笑みが、やたらと胸に突き刺さる。
それは、私が僻んでいるから。
私が何一つ持っていないものを全て、目の前のこの子は持っているから。
羨ましくて仕方ない。
沸き上がる黒い感情が、たちまち私を飲み込んでしまう。
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