5/10
前へ
/189ページ
次へ
「やだなー、そんなことないですよ!サチさんの知ってるりっちゃんのこと、いーっぱい教えてください」 いたずらっぽく笑って言う彼女のおかげで、ふっと肩の力が抜けたみたいに心は軽くなる。 明るくて、気配りもできて……性格まで完璧。 律にはもったいないくらい、いい子だ。 「え、えーっとね。律ってば、小さい頃は本当に女の子みたいで……いたっ!」 期待に応えようと話し始めた途端、頭を容赦なく叩かれて言葉が途切れる。 「アホか。いらんこと言うな」 「なによ、ホントのことでしょ。暴力反対!」 「暴力じゃなくて、教育」 キッと睨み付ける私と、静かにたしなめる律の間に、見えない火花が散る。 なによ、彼女の前だからってカッコつけちゃって。 見慣れない“男”の律が、どうしても面白くなくて、心の中でそんな悪態を吐く。 「ホント仲良しですね、2人とも」 そんな中、くすくすと笑う佳奈さんにハッとする。 いくら幼馴染みでも、例え女扱いされていなくても、律が私と仲良く話していたら、佳奈さんだって気分よくはないだろう。
/189ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1953人が本棚に入れています
本棚に追加