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……せちがらい世の中だ。 安心価格と謳っている割には、なかなか挑戦的な値段のワンピースで挑んだ合コン。 周りからは弾むような黄色い声が聞こえてくるなか、私は一人、芋焼酎のロックをもう3杯目。 「あっ、ねぇ、うすたさん」 「臼井です」 やっとお呼びが掛かったと、背筋を伸ばしてにっこりと笑顔を作る。 そして、さり気なく訂正を入れ、続きを待った。 「ごめん、そこの醤油取ってもらえる?」 醤油……。 ああ、はい醤油ね。 失意の中、近くにある醤油さしを手に取ると、もう一度満面の笑みを作り、差し出した。 「どうぞ」 「ありがとー」 「いいえー」 はい、会話終了。 満面の笑みもさらっとスルー。 いや、むしろ、見てもいない。 臼井祥子、24歳。 “幸が薄い”だなんて縁起でもない名前、両親もよく付けたものだ。 そして名前通りに幸が薄そうに育った私は、よくも悪くも地味で目立たない。 加えて、醤油よりも必要とされない女。
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