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「あほか」 溜め息混じりの冷たい一言が、私が勝手に作り上げためくるめく愛の世界を、思いっきりぶち壊した。 めくるめく愛の世界……人はそれを妄想と言う。 「なんの努力もしない奴に、そんないい男が声掛けるはずないだろ。いい加減、その妄想癖なんとかしろ」 呆れ果てた顔でそう苦言を漏らすのは、沢村律。 家もご近所で、幼稚園から現在に至るまで付き合いがある、いわゆる“腐れ縁”というやつだ。 「したもん!努力っ!!」 「へぇ、どの辺が?」 馬鹿にしたような目で私を見て、律が尋ねる。 「ちゃんとメイクだってしたし!ワンピースだって、“いまむら”で3980円もしたんだから!!」 どうだ、参ったか。 お見逸れしましたと這いつくばって謝んなさい! なんて、拳まで作ってみせ、強気に言う。
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