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「だって……お洒落な服なんて、似合わないもん。それこそいい笑い者になるの、目に見えてる」
ふて腐れてクッションを抱える私に、律はまた呆れた溜め息を漏らす。
「サチは似合わないんじゃなくて、似合う努力をしなさすぎ。実行する前に無理って決めつけて諦める。お前の悪い癖だろ」
何よ、知った口きいてくれちゃって!
そうあらがいたいところだけど、律の指摘はこれまたその通りで。
しかもこれまで何度となく、耳が痛くなるほど言われてきたのに、退化はしても、進化のない私。
「……何よ、律のバカ!」
変われない自分が悔しくて、変わろうとしない自分に腹が立って。
だけど素直に受け入れられず、言われなくても分かっていると、100%混じりっけなしの八つ当たりを、毎度律にぶつけてしまう。
「お前……人がせっかく、親切にアドバイスしてやってんのに、言うに事欠いてバカとはなんだ、バカとは」
律も、よくもまあ根気よく、こんな私を見捨てずに付き合ってくれるものだ。
付き合わせてるのは私なのに、他人事みたいに感心してしまう。
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