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『じゃあ、また、水曜日に』
そう言って電話を切った久保田さんの声が、甘く優しく、いつまでも耳に残っている。
ベッドに転がり込んで、何度も寝返りを打っては、言い様のないくすぐったさを紛らす。
だけどそんなことで、私の興奮は冷めない。
ずっとずっと、見るだけだった夢が、現実に叶ったのだから。
それでもじっとしていられなくて、私は勢いよく体を起こし、携帯の画面を叩いた。
『幸せすぎてヤバイ!』
手早く打った、そんなメールを送りつける。
宛先はもちろん、律だ。
『調子乗んな、バーカ』
すぐに素っ気ないメールが返ってきて、その律らしさに笑った。
すぐにまた携帯が震えて、届いたメールを何の気なしに開く。
どうせまた、律からだ。
思い上がるなと念を押すように、再度『バカ』とあるんだろう。
だけど、今の私は無敵だ。
どんな嫌みもへっちゃら。
……そう思ってた。
だけど、画面に浮き上がる文字を一字一字なぞっていくうちに、私は言葉も笑みも、さっきまでの幸せな気分さえ、失ってしまっていた。
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