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  「彼氏ができた?」 目を丸くして尋ね返すのは、中学時代からの悪友、中村玲子だ。 黒髪のショートボブはちょっとした仕草でさらりと揺れ、一重まぶたのつり上がった目と、それによく合ったアイメイクがクールな印象を与える。 パンツスーツをかっこよく着こなして、ピンヒールで颯爽と歩く姿は、女の私でも惚れ惚れするほどに綺麗。 そんな、見るからに私とは不釣り合いの玲子だけれど、つい最近まで私と同じ部類の人間だった。 いわゆる腐女子というやつで、内容ジャンルこそ違えど、よく2人して妄想の世界に耽っていた。 校則に忠実に、スカートは膝丈。 眉より上に切り揃えた前髪。 後ろ髪は、私は2つに、玲子は1つに束ねていた。 ダサい銀ぶちの眼鏡に加えて、歯には矯正器具を付けた私と、黒ぶちの眼鏡をかけ、当時はだいぶふくよかな体つきだった玲子。 私たちは地味に、そしてひっそりと、教室の隅の方で妄想を日々の楽しみに、学生時代をやり過ごしてきた。 そんな玲子が劇的ビフォーアフターを行ったのは、大学3年の夏。 初めて恋を知り、あっさりと破れ、見返してやると誓いを立てた。 そして、その一心で行った並々ならぬ努力の結果が、目の前の彼女だ。 「祥子に?いつもの妄想じゃなく、現実話で?」 疑いの眼差しを向ける玲子に、こくこくと頷いてみせる。 疑いたくなるのももっともだと、自分でよく分かっているから、別に腹も立たない。
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