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「いくらなんでも、俺まで妄想の対象にするのはやめてくれ」
思いきり頭を叩かれて、ハッと我に返る。
さっきの一瞬が自分の妄想だったことを理解して律を見上げると、呆れ果てた視線が痛いくらいに私を突き刺さして非難した。
「し、してないわよ。あんたで、妄想なんか」
慌てて否定するけれど、律にはそんな誤魔化しは通用しない。
それにしても、律まで妄想の対象にするなんて、本当にどうかしてる。
考えただけで、胸焼けを起こしたみたいに気持ちが悪いのに。
「……佳奈がサチに会いたがってたけど、会わせたくない。汚されそうだ」
「ちょっと、聞き捨てならないわね」
“佳奈”。
最近よく耳にするその名前は、律の新しい恋人だ。
これまで、律の口から恋人の話を聞くことなど滅多になかったのに、今回ばかりは違うから、いかに律が真剣であるかが窺える。
そのせいだ。
なんだか焦ってしまって、そわそわと落ち着かない。
だから、慣れない合コンに参加する、なんて気まぐれを起こしてしまったんだ。
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