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.鳥たちの囀りさえ、遠くに聴こえるこの山々は奥深く、土地勘のない者が足を踏み込めば奈落の底に突き落とす場所として言い伝わる場所。
右門の山。
そして、左門の山。
平地に住む人間の生地をまるで守るかのように双方の山は平地を挟むかのようにそこに長年存在していたが、いつからか人間達がその山に足を踏み入れることはなくなっていた。
人間は愚かだ。
いつからか変わってしまった生き物が、人間という生き物。
人間は愚かだ。
目の前のものを見ようともせず、殺戮を繰り返した挙げ句……。
山々を切り落とし、我が富の為に邪険にしてきた俺達を今度は売り飛ばし、殺すか……。
そこに住むいきとし生ける者達の声が聞こえるかのような雰囲気が風に乗りながら、せせら笑う。
それは、恨みとなり、そこに長年生息していた。
「そんなことは、他の奴も思っているだろ」
白銀の毛並みをゆらゆらと揺らしながら、後方に佇む生き物に目を向けたその生き物は――狼。
後方に佇む生き物も狼だが、同じ風貌に見える双方の狼だが、金色に輝く眼を後方に向けた狼は、一歩また一歩と仲間であろうその狼に歩み寄る。
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