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「餓鬼のお前らはいつも笑わせてくれる。共に住めとぬかすか……。山神の儂ら猪と狼が同じ山に住むなどあってはならぬこと。調和がとれず災いが地に落ちる」
「なら、どうする。人間を食い殺すつもりか。左門の山は次期に人間の手が入ろうとしているが」
「いつ戦になっても構わんが……。それだけのことをあいつらは散々してきた。邪険にしてきた挙げ句、繁栄の為に儂ら生き物を殺め続けた……。
儂らはそのたびに我慢を強いられた。全ては、災いが地に落ちることを防ぐため、それを裏切ったのは人間だろ」
大官と罵るような呼び方をした狼は、一際体格のよい猪を眼に捉えれば牙を剥き出しにしながら威嚇する。
白銀の狼と大官と呼ばれる猪。
双方は対局に位置しながら左門の山で話を進めていたが、話しは平行線を辿る。
群れをつくる猪達とその取り巻きのように、狐や狸は狼達を侮辱めいた言葉で批難し続けていた。
「甘い」
「お前らの母親は、まだ違った」と……。
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