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「侮辱はいいが、母を出すな。人間より先に食い殺されたいか」
黒い毛並みを逆立てながら牙を剥き出しにする狼は、せせら笑う狐達を睨みつける。
萎縮する取り巻きの狐達は、猪達の後ろに隠れはじめた。
形相が変わる黒い狼は、白銀の狼に止められながらも未だ猪達の取り巻きを威嚇し続けた。
「狛よ。玄を止めずともいいだろ」
大官と呼ばれる猪は、二匹の狼を見下ろした。
狛と呼ばれた白銀の狼は、大官の言葉に金色に輝く眼を細ませた。
「狛よ。お前らの母親はこの谷にあってはならぬ存在だった。人間と儂らが契りを交わした際、お前らの父と母が橋渡しをし共存が生まれた……。
だが、お前らの父親と母親は、殺された。愚かな人間の手によって……」
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