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私は風ちゃんと別れてから交番へカメラを届けに行った。でも、交番に行ったフリをして、私は拾ったカメラを持ち帰ってしまった。
写真の男性と会いたくなってしまっていた。
犯罪なのは分かっていた。しかし、悪いことだとわかっていてもそのカメラを交番へは持って行きたくなかった。
その男性を見ることができなくなってしまうから。
私は拾ったカメラの電源を入れ、男性の写った写真を見た。
彼を見てると、とてもドキドキする。
「夕飯できたわよー」
お母さんの声が下から聞こえてきた。わたしは驚いて時計を見てみた。
カメラに電源を入れてから一時間も男性の写真を見ていた。
深いため息をついて部屋を出て、夕飯を食べに下に降りて行った。
テレビから聞こえてくるアナウンサーの声。私以外には聞こえている。食事中も男性の事を考えていた。男性が好きな料理、男性が目の前にいたら、どんな会話をしようかとか。私の食事の手は止まってしまっていた。
「琴、どうしたの。具合でも悪いの?」
お母さんが私を、とても心配そうに見つめている。今日の食事は、私が好きな塩からあげが、食卓に並んでいる。
「具合は悪くないよ。ただ、テストでちょっと疲れたかな。ご馳走様」
私は、食事にほとんど箸をつけないまま、自分の部屋へ戻っていった。
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