No.3

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「ぼへっ!?」 変な叫び声をあげセルナは木につっこんだ。 枝に引っかかった体をゆっくりと起こす。 「いったぁ~……」 箒ごとつっこんだためあちこちに葉っぱがついている。 ゆっくりと呪文を唱え始める。 「ごめんね…」 木の幹と箒をそっと撫でる。 それに答えるように、木は枝を揺らし、箒はゆっくりとひとりでに舞う。 「誰だ…」 はっと、上を見上げると夜空のような綺麗な黒髪と瞳をもつ一人の青年がいた。 「んだよ……魔女のひよっこかよ。魔力は弱ぇし…ったく」 青年は難しい浮遊の魔法を楽々とやってのけた。 (もしや…上級魔法使い……??) セルナも箒にまたがり宙へと舞う。 よく見えるようになった青年を見たとたん、目を見開いた。 (っ!?!?あっ、あの印ってっ…使い魔!?なんで!?) 上級魔法使いが使う魔法を、使い魔が使うなどありえないことだった。 ましてや、自分と同じ魔力を持つ者が使い魔になることが信じられなかった。 (あの人……自分の名を売ったんだ……) この世には皆二つの名を持つ。 呼び名と真実の名。 真実の名を自分以外の誰かに教えてしまうと自分の名は消え…ー魔力や魂を売ったことと同じになる。 (あれだけの魔力を持つ使い魔なんて初めて見た…) そんなセルナにお構いなしな様子の青年にますますぽかんとしてしまう。 「まっ、魔力があるだけましか…」 頭をぽりぽりとかいた青年は薄くニヤリと笑うとセルナに近づいて来た。 「ひよこ。お前の魔力いただくぜ?」 「えっー?」 すっと伸ばされた手はセルナの顎をくいっと上げさせた。 青年の顔が近づいてきたかと思えば唇に何かか優しく触れた。 (……何?) 「んーやっぱ地味だなひよこ」 すると、乗っていた箒ががくんと落ちた。 その前にセルナは青年に抱きとめられる。 どんどんとセルナの顔は青ざめていく。 (まっ、魔力が使えない!?って…その前にっ!!) 「私のファーストキス返してよぉーっ!!!!」 ……end。
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