甘い罠

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ビンゴ。 ビンゴ、ビンゴ、ビンゴ。 花の甘い香りに柑橘系のスッキリした香りが混じった匂い。 決して甘ったるい匂いではない。 危険な香りと仕草、体全体から醸し出される独特の色気に手繰り寄せられるように、カウンターに一人で座る彼に俺は近づいた。 「…この席、いい?」 「……どうぞ」 彼は俺の顔を横目で確認すると、素っ気なくそう答えた。 ぶっきらぼうな態度。 俺が隣に座ると、彼は一口カクテルを口に含み、俺を軽く睨んだ。 結構飲んでいたのか、大きな瞳には若干涙が溜まり、触りたくなるような真っ白い頬はピンク色に染まっていた。 「ヤケ飲み?」 「別にぃ…。 飲みたい気分になっただけ」
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