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「それと、ジルさん。弟さんは、反乱が表沙汰になるのを恐れた長老に捕まりましたよ。急いで助けなければ、大変ですよ?」
動揺を隠せないでいるジルに、フリントは更にたたみかけて言う。
「フフ、お二方の目的が食い違ってきたようですな。さて、いかがなさいますかな?…それでは、ごきげんよう。」
フリントが、木々の間に消えた。
「…レムオン。」
ジルは、彼が領主だときかされても、それでもこの金髪の男の側に駆け寄った。
「奴の言うとうり、俺はこの地の領主、レムオン・リューガだ。」
真っ直ぐな、黒い瞳がジルを見た。
「王妃エリスの密使フリントが、この地に反乱を起こそうとしていると知り、ここに来た。弟のエストもここに来ていた。弟が反乱騒ぎに巻き込まれないようにもしたかった。」
「……。」
「フリントが手に入れた密書というのは、俺にとって致命的な秘密の糸口になるものだ。雌狐と言われるほどのエリスなら、有効に使ってくるだろう。…これがすべてだ。」
真実を告げ、レムオンは、ジルの横を通りすぎノーブルの町へと歩き出した。
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